業務フロー図とは、仕事の流れを「誰が・何を・どういう順で」の形で図にしたものです。文章の手順書と違い、全体像と分かれ道が一目で分かります。ただし、作ったのに使われないフロー図も多くあります。分かれ目は、きれいさではなく例外時の分岐が書いてあるかどうかです。この記事では、中小製造業で実際に使われるフロー図の作り方を解説します。

フロー図が向いている場面、向いていない場面

すべての業務をフロー図にする必要はありません。向き・不向きがはっきりしています。

  • 向いている:複数の人・部署をまたぐ業務(受注から出荷まで、見積依頼から提出まで)。誰にボールがあるかが問題になる仕事。
  • 向いている:条件によって進み方が変わる業務。分岐を図で示すと、文章の何倍も伝わります。
  • 向いていない:1人で完結し、順番も一本道の作業。これは箇条書きの作業標準書のほうが速く読めます。
  • 向いていない:手の動きや力加減など、体で覚えるもの。これは動画の領域です。

作り方の5ステップ

  1. 始まりと終わりを先に決める:「何が起きたら始まるか」「何ができたら終わりか」を1文ずつ書きます。ここが曖昧なままだと、途中で範囲が膨らんで終わらなくなります。
  2. 登場人物を横に並べる:営業・製造・購買・お客様など、関わる人を横一列(またはレーンに分けて)置きます。誰の仕事かが分かるだけで、フロー図の価値は半分決まります。
  3. 正常時の流れを最短で一本つなぐ:まず何も問題が起きなかった場合だけを書きます。ここは10〜20個の四角に収めてください。
  4. 分岐を足す:ここが本番です。「条件が揃っていなかったら」「お客様の返事が来なかったら」「在庫がなかったら」。現場が本当に迷うのは、この部分です。
  5. その業務を知らない人に読ませる:説明なしで読んでもらい、詰まった箇所に書き足します。これをやらないフロー図は、書いた人にしか読めません。

記号は3つで足りる

正式な記法を覚える必要はありません。社内で使うだけなら、次の3つで書けます。

  • 四角:作業(「見積書を作成する」)
  • ひし形:分岐(「設置条件は確認済みか?」→ はい/いいえ)
  • 矢印:流れ

書類やデータを表す記号を足したくなりますが、増やすほど読む側の負担になります。記号を覚えないと読めない図は、読まれません。

粒度をそろえる

1枚のフロー図の中で、粒度がばらつくと非常に読みにくくなります。「受注する」と「ExcelのB列に品番を入力する」が同じ図に並んでいる状態です。

目安は1つの四角が15分〜1時間で終わるまとまり。細かい操作は、四角の中には書かず、別紙の手順書に切り出して「詳細は手順書○○」とだけ書きます。図は全体像、手順書は細部——この役割分担が守れていれば、両方が長持ちします。

「使われるフロー図」の3条件

  • 例外が書いてある:正常時だけの図は、すでにみんな知っているので見ません。
  • 置き場所が業務の入口にある:フォルダの奥ではなく、その仕事を始める画面や書類の近く。紙で貼るのも有効です。
  • 直せる形式で保存されている:PDFだけで残すと、現実が変わったときに誰も直せません。元ファイルの場所を図の中に書いておいてください。

フロー図を作る前に

いきなり図を描き始めると、たいてい途中で行き詰まります。先に業務の可視化で工程を洗い出し、それを図に起こす順番が確実です。洗い出しの段階で「ここで迷う」と出てきた箇所が、そのまま図のひし形になります。

まとめ

  • 業務フロー図は、複数の人をまたぐ業務と、条件で進み方が変わる業務に向く。一本道の作業には要らない。
  • 手順は、①始まりと終わりを決める ②登場人物を並べる ③正常時を一本つなぐ ④分岐を足す ⑤知らない人に読ませる。
  • 記号は四角・ひし形・矢印の3つで足りる。増やすほど読まれなくなる。
  • 粒度は1つの四角が15分〜1時間。細部は手順書に切り出す。
  • 使われる条件は、例外が書いてある・入口に置いてある・直せる形式で保存されている。

「どこまで図にして、どこから手順書にするか」の線引きからご一緒します。まずは15分の相談で、対象にする業務を1つ決めるところから。