業務の棚卸しとは、いま社内にどんな仕事があり、それぞれ誰が担当しているかを一覧にすることです。属人化の対策も、人員配置の見直しも、まずここから始まります。ただし一覧を作ること自体が目的になると、大きな表ができただけで何も変わりません。この記事では、次の一手につながる棚卸しのやり方を解説します。
棚卸しで書き出す5項目
業務名だけを並べた一覧は、あとで使えません。最低限、次の5つをセットで書きます。
- 業務名:「見積作成」「受注入力」など。粒度は後述します。
- 担当者:主担当と、代われる人。代われる人の欄が空いているものが、今回いちばん重要な情報です。
- 頻度:毎日/週◯回/月◯回/年◯回。
- 1回あたりの時間:おおよそで構いません。5分か、1時間か、半日か。
- 止まったときの影響:その仕事が3日止まると何が起きるか。「出荷が止まる」「請求が遅れる」など具体的に。
この5項目のうち、対策の優先順位を決めるのは「代われる人」と「止まったときの影響」です。頻度と時間は、あとで作業量を見積もるときに使います。
粒度をどう決めるか
細かく分けすぎると、数百行の表になって収拾がつきません。逆に粗すぎると「営業活動」の一行で終わり、何も分かりません。
目安は「1つの業務 = 始まりと終わりがはっきりしていて、1回あたり15分〜半日で終わるもの」。1人あたり15〜30個に収まれば、扱える大きさです。
判断に迷ったら、「これは誰かに頼めるか」で考えてください。頼める単位になっていれば、粒度は適切です。
抜けやすい業務
本人に書き出してもらうと、次のような仕事はほぼ確実に抜けます。本人にとっては業務ではなく「日常」だからです。
- 電話・来客の一次対応:誰に取り次ぐかの判断が、実は経験の塊になっていることがあります。
- 他部署からの相談対応:「ちょっと聞きたいんだけど」で始まる時間。総量は大きいのに記録に残りません。
- トラブル時の連絡先の判断:どの業者に、どの順で連絡するか。この人が休んだ日にトラブルが起きると、そこで止まります。
- 取引先ごとの例外的な扱い:「A社は必ず先に電話を入れる」といった、書かれていない約束事。
- 月末・年度末にだけ発生する作業:聞き取りをした月に発生しないと、思い出されません。
これらを拾うには、「先月、予定外に時間を取られたことは何ですか」「あなたが休んだ日に、誰かから連絡が来ることはありますか」と聞くのが有効です。
棚卸しの進め方(4ステップ)
- 範囲を先に区切る:全社ではなく、1部署または数名から。全社一斉にやると、集計が終わる前に現場の関心が切れます。
- 本人に一覧を書いてもらう:業務名と頻度だけで構いません。完璧を求めないでください。
- 聞き取りで補う:上の「抜けやすい業務」を質問で拾い、時間と影響を埋めます。1人1〜2時間が目安です。
- 「代われる人」の欄を突き合わせる:ここが棚卸しの成果です。空欄になっている業務が、いま危ない業務です。
棚卸しのあと、何をするか
一覧ができたら、1つだけ選んでください。「代われる人がいない」かつ「止まると影響が大きい」ものです。
選んだら、その業務について工程と判断の可視化に進みます。棚卸しは「どれをやるか」を決めるための作業であって、それ自体が対策ではありません。一覧を作って安心してしまうのが、いちばんもったいない終わり方です。
やってはいけないこと
- 評価に使う:「業務量が少ない人」を探す道具として使った瞬間、正直な申告は集まらなくなります。目的は「休めるようにすること」だと最初に明言してください。
- 全部を同時に改善しようとする:一覧に並んだ全業務にマニュアルを作る計画は、ほぼ必ず途中で止まります。
- 一覧を更新しないまま放置する:半年で実態と合わなくなります。次に見直す日を決めて、その場でカレンダーに入れてください。
まとめ
- 棚卸しで書くのは、業務名・担当者(代われる人)・頻度・時間・止まったときの影響の5つ。
- 粒度は「1回15分〜半日」「誰かに頼める単位」。1人15〜30個が目安。
- 電話対応・他部署からの相談・トラブル時の判断は、本人が書くと必ず抜ける。質問で拾う。
- 成果は「代われる人が空欄の業務」を見つけること。
- 一覧を作って終わりにしない。1つだけ選んで次に進む。
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