「マニュアルはあるのに、結局ベテランに聞いてしまう」——中小製造業の現場でよく起きることです。その多くは、マニュアルに手順は書いてあるが「判断」が書かれていないことが原因です。この記事では、勘や判断といった暗黙知を見える化する道具、「判断表」の作り方を具体的に解説します。
判断表とは?──「迷ったときにどうするか」を書いたもの
判断表とは、「どういう条件のときに、進めるのか・止めるのか・誰に相談するのか」という判断の基準を、条件と対応の組み合わせで整理した表です。手順書が「正常時のやり方」を書くものだとすれば、判断表は「例外時・分かれ道での考え方」を書くものです。
現場が止まるのは、たいてい正常時ではなく例外が起きたときです。「この数値が出たらどうする?」「この条件のお客様にはどう見積もる?」——ここでベテランに聞くしかない状態が、属人化の正体です。判断表は、その「聞くしかない」を減らします。
なぜ手順書だけでは足りないのか
熟練者は、手が勝手に動くレベルで判断しています。本人は「当たり前」と思っているため、手順書には書きません。しかし、次の人にとってはその「当たり前」こそが分からない部分です。残すべきは、次の3つです。
- 判断基準:進める・止める・相談する、の分かれ目になる条件
- 例外対応:異常・急ぎ・特殊なケースで、どこを見て、どう動くか
- 理由(なぜ):なぜその基準なのか。理由があると応用が利く
判断表の作り方(4ステップ)
- 「よく迷う場面」を洗い出す:まず、担当者が「これは判断が要る」と感じる場面を挙げます。全部でなく、間違えると影響が大きいもの・頻度が高いものから。
- 条件と対応をセットで書く:「〈条件〉のときは、〈対応〉する」の形で書きます。たとえば「〈設置条件が未確認〉のときは、〈見積を出さず、営業に確認〉する」。表にすると、条件・対応・理由の3列が基本です。
- 「なぜ」を一言添える:理由を書いておくと、表にない状況でも応用できます。ここが、単なるチェックリストと判断表の違いです。
- 別の人で試して、穴を埋める:その業務を知らない人に判断表だけで判断してもらい、迷った箇所を追記します。これで実際に使える表になります。
判断表の書き方の例(イメージ)
たとえば設備トラブルの一次対応なら、こんな形です(あくまで書き方のイメージです)。
- 条件:異音がする / 対応:まず○○を確認し、△△なら停止して報告 / 理由:△△は重故障の兆候だから
- 条件:数値が基準を超えた / 対応:□□を調整。改善しなければ担当者へ連絡 / 理由:調整で戻る範囲と、戻らない範囲があるため
大切なのは、きれいな表を作ることではなく、次の人が迷ったときに見れば動けること。手書きの一覧から始めても構いません。
まとめ
- 判断表は「進める・止める・相談する」の基準を書いた表。手順書の弱点である「例外時の判断」を補う。
- 残すのは、判断基準・例外対応・理由(なぜ)の3つ。
- 作り方は、①よく迷う場面を洗い出す ②条件と対応をセットで書く ③理由を添える ④別の人で試す。
- 完璧を目指さず、影響の大きい判断から少しずつ増やすのが現実的。
「うちのベテランの判断を、どう表にすればいいか」を一緒に整理したい方は、まず15分の相談から。止まると困る一業務を対象に、勘どころまで会社に残すお手伝いをしています。