マニュアルに写真を入れると分かりやすくなる——これは本当ですが、入れ方を間違えると、量が増えただけで伝わらない資料になります。この記事では、中小製造業の現場で実際に役立つ写真の撮り方を、どこを撮るか・どう撮るか・どう管理するかの3点で解説します。特別な機材は要りません。
まず「どこを撮るか」を決める
全工程を撮る必要はありません。撮るべきは言葉で説明しにくい箇所だけです。具体的には次の4つ。
- 位置を示す必要がある場面:「右上のバルブ」と書いても、初めての人には見つかりません。
- 正常と異常の見分け:色、汚れ、傷、目盛りの位置。ここが最も価値があります。
- 手の使い方・向き:どちら側から、どの向きで持つか。
- 完成状態:これで合っているかを確認するための1枚。
逆に、文章で足りるところに写真を入れると、読む量が増えて使いにくくなります。写真は多いほど良いわけではありません。
「正常」と「異常」を並べて撮る
1枚だけの写真では、良し悪しの判断はできません。正常な状態と、異常な状態を並べて載せる——これが最も効きます。
「この色になったら交換」「この隙間が見えたら止める」。ベテランが目で判断していることの多くは、2枚並べれば伝わります。言葉にできない判断でも、写真の比較なら残せることがあります。
この考え方は、暗黙知を形式知に変えるときの基本でもあります。
撮り方の5つのコツ
- 作業者の目の高さから撮る:斜め上や真横から撮ると、実際に見る景色と違うため、かえって分かりにくくなります。実際にその作業をする位置に立って撮ってください。
- 手を入れて撮る:物だけを撮るより、手が写っているほうが大きさと向きが伝わります。
- 周りも少し入れる:アップだけだと、どこの部分か分からなくなります。全体の写真と、寄りの写真をセットにします。
- 撮ったその場で矢印と丸を入れる:スマホの編集機能で十分です。見てほしい箇所に印がない写真は、見る人によって違うところを見ます。
- 明るさだけは気にする:暗い写真は何も伝わりません。機械の陰になる場所は、ライトを当てるか位置を変えて撮り直します。
写真だけでは足りないもの
写真が強いのは状態を示すこと。弱いのは動きと理由です。
- 動き:締める順番、力の加減、タイミング。ここは短い動画のほうが向きます。
- 理由:なぜその位置なのか、なぜその順番なのか。写真の横に1行だけ書いてください。理由があると、写真と違う状況でも応用できます。
写真の管理でつまずかないために
- 元データの置き場所を決める:マニュアルに貼り付けただけだと、差し替えのときに元がありません。撮った写真は業務ごとのフォルダに残します。
- ファイル名に日付を入れる:`20260802_点検_圧力計_正常.jpg` のように。あとで古い写真を見分けられます。
- 設備が変わった日に撮り直す:撮影を特別な作業にせず、その場で1枚。数分で終わります。
- 人の顔と、社外秘の情報が写り込んでいないか確認する:図面、取引先名、個人が特定できる情報。社外に出す可能性があるマニュアルでは特に注意してください。
まとめ
- 撮るのは、位置・正常と異常の見分け・手の使い方・完成状態の4つ。全工程は撮らない。
- 正常と異常を並べて載せると、言葉にできない判断が伝わる。
- 作業者の目の高さから、手を入れて、周りも少し入れて撮る。矢印と丸をその場で入れる。
- 動きは動画、理由は写真の横に1行。写真だけで全部を伝えようとしない。
- 元データを残し、ファイル名に日付を入れ、設備が変わった日に撮り直す。
「どこを撮ればいいか分からない」という段階からご相談いただけます。現場を拝見して、撮る箇所の選定からご一緒します。まずは15分の適合確認から。