ベテランの手作業を動画で残したい。スマートフォンで撮ってはみたものの、編集も整理も手が回らず、撮ったままの動画が眠っている——中小製造業でよくある場面です。この記事では、動画マニュアルの作成を外部に頼む(代行を依頼する)前に、社内で決めておくことと、見積を取るときに確認することをまとめました。
動画マニュアルの外注が向くケース、自分で作るほうがよいケース
動画マニュアルは、何でも外注すればよいわけではありません。分かれ目は、対象になる業務と、社内の手の空き具合です。
- 外注が向くのは、対象がベテランの熟練作業で、退職や異動が迫っていて撮り直しの機会が少ないとき。本数がまとまっていて社内で編集の時間が取れないとき。撮影だけでなく手順の整理(構成)から人手が欲しいときです
- 自分で作るほうがよいのは、日々の作業を少しずつ残したいとき。手順の変更が多く撮り直しが頻繁なとき。まず一本だけ試したいときです
自分で作る場合の撮り方・続け方は「動画マニュアルの作り方」にまとめています。先に一本だけ自作してみると、外注するときに何を頼みたいかが具体的になります。
背景として、製造業では技能継承に問題があるとした事業所が54.7%にのぼります(厚生労働省「平成28年度 能力開発基本調査」・2016年度の調査)。教える側の時間が足りない現場は多く、撮影と編集の手を外から借りるのは現実的な選択肢です。
外注する前に、社内で決めておく3つのこと
ここから先は外注できません。頼む前に決めておかないと、見積も出来上がりもぶれます。
- 対象の業務を一つに絞る|「現場の作業をひととおり」では、見積が出せず、完成もしません。止まると一番困る業務を一つ選びます。複数挙がったら「その人が明日から来なくなったとき、一番困るのはどれか」で決めます
- 見せる相手を決める|入ったばかりの新人か、応援に来る他部署の人か、日本語に不慣れな人か。見せる相手によって、字幕の量も、専門用語の言い換えも、一本の長さも変わります
- 更新の担当を決める|動画は完成した日から古くなり始めます。手順が変わったとき、誰が気づいて、誰が直すのか。社内の担当を決めてから頼まないと、納品された動画はいつの間にか「今と違う動画」になります
見積を取るときに確認すること
会社によって、やってくれる範囲がまったく違います。少なくとも次の4点は、見積の段階で聞いてください。
- 撮影・編集だけか、構成から頼めるか|撮った素材を編集するだけの会社と、業務の聞き取りや手順の整理から入る会社があります。ベテランの頭の中を整理する段階から必要なら、後者を選びます
- 判断や例外まで扱うか|手の動きを撮るだけでは、見た人は再現できません。「どこを見て良し悪しを決めるか」「うまくいかないときどうするか」まで動画や補足資料に入れてくれるかを確認します。判断の残し方は「判断表の作り方」も参考になります
- 更新のしやすさ|編集前の元データをもらえるか、手順が一部変わったとき部分的に差し替えられる作りか、自社でも直せる形式か
- 権利と保管場所|完成した動画の著作権(作った動画を直したり使ったりできる権利)はどちらのものか。動画はどこに保管され、契約が終わったあとも見られるのか。ここを曖昧にすると、あとから動画を直せない・移せないことになります
料金は、本数・撮影日数・構成から頼むかどうかで大きく変わるため、一律の相場では比べられません。金額の前に、この4点で「どこまでやってくれるのか」を揃えてから比較してください。費用の考え方を含め、文書のマニュアルを外注するときと共通する選び方は「マニュアル作成代行の選び方」にまとめています。
「きれいな動画」より大事なこと
見本として見せられる動画は、照明も音声も編集もきれいです。ただ、現場で機能するかどうかは、別の基準で決まります。
- 現場で止めて見られるか|作業の合間に、手袋のまま、見たい箇所だけを見る。それができるように、工程ごとに短く分かれているか、目次から飛べるか
- 判断が入っているか|作業の動きに加えて、「ここを見る」「こうなったら合格」「違ったら誰に聞く」が入っているか。ここが抜けた動画は、きれいでも仕事を引き継げません
発注の場では映像の質に目が行きがちですが、先に確かめるべきは、現場で見返される作りになっているかどうかです。
よくある失敗
- 撮って終わり|完成した動画を、実際に新人に見せて作業してもらう確認をしていない。手が止まった箇所が動画の穴です
- 一本が長すぎる|作業を最初から最後まで通しで収めた動画は、現場では見返されません。工程ごとに分けて、見たい箇所にすぐ届く形にします
- 更新されない|納品されて終わりになり、手順が変わっても直されない。更新の担当と元データの引き渡しを、発注の前に決めていないことが原因です
まとめ
- 外注が向くのは、撮り直しの機会が少ない熟練作業を、社内の手が足りないまま残さなければならないとき。自作との使い分けから考える。
- 外注の前に社内で決めるのは、対象業務の絞り込み・見せる相手・更新の担当の3つ。ここは外注できない。
- 見積では、構成から頼めるか・判断や例外まで扱うか・更新のしやすさ・権利と保管場所の4点を確認する。
- 映像のきれいさより、現場で止めて見られるか、判断が入っているかで選ぶ。
- 撮って終わりにせず、新人に見せて作業してもらい、止まった箇所を直す。