スキルマップ(力量表・技能マップ)とは、誰がどの業務をどこまでできるかを一覧にした表です。作る目的はひとつだけ——「1人しかできない業務」を見つけることです。ここを誤って能力の格付けとして使うと、現場の反発を招き、正確な情報も集まらなくなります。この記事では、実際に使えるスキルマップの作り方と、その後の使い方を解説します。ISO9001の力量管理として作っている場合は力量管理と教育訓練の記録もあわせてご覧ください。
目的を1つに絞る
スキルマップには複数の使い道がありますが、中小製造業がまず作るなら、目的は「危ない業務の特定」だけにしてください。
- やること:どの業務が1人に集中しているかを見つける。
- やらないこと:人事評価、昇給の判断材料、能力の順位付け。
目的が複数あると、記入する側が身構えます。「できない」と書くと不利になるかもしれないと思われた時点で、表は実態を映さなくなります。
作り方の4ステップ
- 縦に業務、横に人を並べる:業務は業務の棚卸しで出したものを使います。粒度は「1回15分〜半日で終わり、誰かに頼める単位」。1人あたり15〜30個が目安です。
- 3段階で埋める:◎=1人でできる/○=教われば分かる/空欄=未経験。最初は本人に自己申告してもらい、上長が補正する形が早いです。
- 列を見る:ここが本番です。◎が1つしかない列を探します。それが、いま1人に依存している業務です。
- 影響の大きさで並べ替える:◎が1つの業務のうち、止まると影響が大きいものから優先順位をつけます。頻度ではなく影響です。
判定基準を決めておく
「1人でできる」の意味が人によって違うと、表が使えなくなります。埋める前に、こう定義してください。
- ◎(1人でできる):誰にも聞かずに、最後までやり切って、結果に責任を持てる。
- ○(教われば分かる):手順書を見ながら、あるいは1回聞けばできる。
- 空欄(未経験):やったことがない。
特に◎の定義が重要です。「手伝ったことがある」を◎にすると、表が実態より安全に見えてしまい、本当に危ない業務が隠れます。
作ったあとの使い方
表を作って終わりにしないでください。次の順で使います。
- ◎が1つの業務を、影響の大きい順に並べる
- いちばん上の1つを選ぶ:複数を同時に進めない。1つ終わらせて型を作ると、2つ目からは速くなります。
- その業務のやり方を形にする:手順・判断・例外を書き残します。先に人を増やそうとしないこと。教える中身が頭の中にしかないと、ベテランの時間が人数分そのまま消えます。
- 2人目に読んでもらい、詰まった箇所を書き足す
- ◎が2つになったら、次の業務へ
この進め方は多能工化の進め方で詳しく扱っています。
更新をどうするか
スキルマップは、作った直後から実態とずれ始めます。ただし毎月見直す必要はありません。次の3つが起きたときだけ直せば足ります。
- 人が入った、抜けた、異動した
- 誰かが新しい業務をできるようになった
- 業務そのものが増えた、なくなった
これに加えて、年1回だけ全体を見る日を決めておけば十分です。
よくある失敗
- 細かく分けすぎる:200行の表は誰も見ません。1人15〜30個に収めます。
- 5段階にする:判定の議論に時間がかかり、使い道は増えません。
- 評価に使う:一度でも転用すると、次から正確な申告は集まりません。
- 人の行を見る:「誰ができていないか」を見る表ではありません。見るのは列です。
- 作って満足する:スキルマップは診断であって、対策ではありません。
まとめ
- 目的は1つ。「1人しかできない業務」を見つけること。評価には使わない。
- 縦に業務・横に人。3段階(◎/○/空欄)で足りる。
- ◎の定義は「誰にも聞かずやり切れる」。甘くすると危ない業務が隠れる。
- 見るのは人の行ではなく、業務の列。◎が1つの列が危ない業務。
- 作ったあとは1つだけ選び、先にやり方を形にしてから2人目を作る。
「表は作ったが、そこから何をすればいいか分からない」という段階からご相談いただけます。まずは15分の適合確認で、対象にする1業務を決めるところから。