見積作成に時間がかかる——その原因は、多くの場合計算ではなく「情報が揃わないまま始めて、途中で止まる」ことにあります。この記事では、時間がどこで消えているかの測り方と、実際に短縮できる箇所を順に整理します。ソフトの導入はその後の話です。
まず、時間がどこで消えているかを分ける
「見積に3日かかる」と言うとき、その3日の中身は次のように分かれています。
- 実際に手を動かしている時間:拾い出し、単価の計算、書類作成
- 確認待ちの時間:客先への問い合わせ、技術部門への相談、上長の承認待ち
- 手戻りの時間:条件が違っていて作り直す
1件でいいので、この3つを分けて測ってください。ほとんどの場合、2番目と3番目が大きくなっています。だとすれば、計算を速くしても全体は変わりません。
短縮できる4つの箇所
1. 聞き漏らしをなくす(最も効く)
見積の途中で客先に問い合わせが発生するのは、最初のヒアリングで聞くべきことが決まっていないからです。1回の問い合わせで、返事待ちが1〜2日発生します。
対処は、確認項目を1枚の質問票にすること。これがあれば、初回のやり取りで必要な情報が揃います。作り方は見積ヒアリングの標準化にまとめました。
2. 「相談するかどうか」の線引きを決める
技術部門に相談すべきか、自分で判断していいか——ここが曖昧だと、2つの損が出ます。不要な相談で待たされるか、相談せずに進めて手戻りになるかです。
「この条件を超えたら相談」という基準を数値で決めてください。判断表の形にすると、担当が代わっても同じ判断ができます。
3. よく出る構成を、型として持つ
毎回ゼロから拾い出していませんか。過去の見積のうち、よく出る構成の上位3〜5パターンを型として保存しておくと、拾い出しの時間が大きく減ります。
完全一致する必要はありません。近いものを呼び出して差分だけ直す形にすれば、抜けも減ります。
4. 承認の待ち時間を減らす
「金額いくら以上は上長承認」というルールがある場合、承認者が不在の日に止まります。次のどちらかを決めておいてください。
- 不在時の代理承認者を決める
- 金額の基準を見直す(すべてを承認対象にしない)
「あの人しか出せない」の正体
見積が特定の人にしか出せない状態のとき、その人が持っているのは計算能力ではありません。持っているのは次の3つです。
- 何を確認すべきか:図面のどこを最初に見るか、何が抜けていると危ないか
- 標準か特殊かの判断:この条件は通常の範囲か、割増が要るか
- 危ない案件の嗅覚:何を見て「これは危ない」と思うか
この3つは、聞き出せば言葉にできます。抽象的に「どう判断していますか」と聞いても出ませんが、実際の案件を出して「このとき、なぜそう思ったんですか」と聞けば出てきます。聞き方はヒアリングのやり方を参照してください。
ソフト導入は、その後で
見積ソフトは、単価計算と書類作成を速くします。ただし「何を確認すべきか」「標準か特殊か」の判断は、ソフトでは決まりません。
判断が1人に張りついたままソフトを入れると、その人が不在の日はやはり止まります。順番は、確認項目と判断基準を先、ソフトは後です。
今日からできる進め方
- 次の1件で、時間を3つに分けて測る:手を動かした時間/確認待ち/手戻り
- その1件で使った確認項目を、そのまま書き出す:まとめる時間は要りません
- 3件たまったら、共通項目を1枚の質問票にする
- 相談の線引きを、数値で1行決める
- よく出る構成を3つ、型として保存する
まとめ
- 時間は計算ではなく、確認待ちと手戻りで消えていることが多い。まず分けて測る。
- 短縮できるのは4箇所。聞き漏らし/相談の線引き/よく出る構成の型/承認の待ち時間。
- 「あの人しか出せない」の正体は、確認すべき箇所・標準か特殊かの判断・危ない案件の嗅覚。
- この3つは、実際の案件を起点に聞けば言葉にできる。
- ソフトは、確認項目と判断基準を決めてから。順番を逆にしない。
見積の属人化は、私が水処理・産業設備の技術営業として当事者だった領域です。診断で使う質問リスト26問も、見積作成を題材に全文公開しています。ご相談は15分・無料から。